「シルクロード」は内陸アジアと中国とを結んだ交易路。昔の内陸アジアでは絹の製法を知らなかったため、中国で生産される絹織物は高価な輸入物としてもてはやされており、内陸アジアの商人たちは長い旅路にもかかわらず、こぞって中国を目指したのである。そのため、「絹の道」(シルクロード)という名前がつけられたのだが、このいかにも優雅な、古代へのロマンをかきたてられる名前には、実はちゃんと名付け親がいたのだ。その人は、ドイツの地理学者フェルディナント・フォン・リヒトホーフェン男爵。十九世紀に旅行家として活躍した彼が、最も魅了された国が中国だった。一八六六年から一八七二年までの間に、当時の中国に十八あった州のうち十三もの州を訪れたという。もちろん今のように交通路が発達していたわけではないから、これは並大抵のことではない。その彼が書いた『中国』という本の中で、この内陸アジアから中国まで達する道を「絹街道」(ドイツ語で『ザイデンシュトラーセン』)と呼んだのである。しかし「ザイデンシュトラーセン」という名前のうちは、あまり世間に取り沙汰されることはなく、後に英語訳されて「シルクロード」になってから急に人気が出てきて、ブームになったという。たしかにこちらのほうがソフトな響きではある。今はやりの音相学ではないが、ネーミングはやはり大事ということか……。
元気がよいのがフラメンコの国、スペインである。スイスのコミュニケーション会社の調査では、スペインの公衆電話数は1000人当たり8.6台でヨーロッパでナンバー1。スペインではそれだけ街角で公衆電話がかけやすくなっているというわけだ。スペインでの公衆電話のかけ方は、まず受話器を取り、5、25、100ペセタ硬貨を電話機の上にあるレールに載せる。そしてダイヤルを回し、相手が出るとコインが落ちる。市内通話の最低料金は15セペタなので5セペタなら3個載せなくてはならない。一方電話局やバル(バー)には投入金額が表示される緑色の電話機があり、プリペイドカードでも利用できる青色や黒色の新型電話機もホテルや商店にお目見えしている。また“interurbana”と書かれた公衆電話からは、ダイヤル直通で国際電話がかけられる。日本にかける場合はまず07を回し、発信音が変わると日本の国番号81。そして市外局番のOを除いた相手の電話番号を回せばいい。
広島県は安芸と備後の二国からなる。備後の中心は阿部氏一〇万石の福山市。NKK(日本鋼管)の主力工場が来て発展した。福山城の天守閣は戦災で失われたが、現在では復元されている。創建当時から現存する伏見櫓はその名が示すとおり伏見城の遺構を移したもので、華麗な桃山風の名建築。伏見城の建築はすべて撤去されて全国各地に移築されたが、いずれも華麗な桃山文化の粋を感じさせる。皇居二重橋の風景になくてはならない二層櫓もそのひとつである。尾道はかつて福山のライバルだったが、背後の山と海の間が狭いので人口ではだいぶ差を付けられた。しかし、国宝の多宝塔をもつ浄土寺など坂道に古い街並みや寺院が並ぶ美しい町で、林芙美子の小説や大林宣彦監督の青春映画で知られ人気がある。町衆の熱意もたいへんなもので、秋にはグルメ・フェスティバルが町を上げて開かれる。有名人を何人も呼び、同時並行的に昼間は講演会、夜は講師を囲んで夕食会、さらに講師を連れて夜の町へ繰り出すという、町中で教養を深め、食文化を楽しもうというユニークな催しである。
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